肝臓の幹細胞(liver stem cells)を作成することに成功
国立ガンセンターの幹細胞生物学チームが、皮膚や胃の細胞に遺伝子を導入するなどして、肝臓の肝細胞を培養することに成功した。現在のところ、約200日間安定して培養することができており、冷凍して保存したあとでも、また培養することに成功したもよう。
肝臓は人間の臓器のなかでも重要な器官となっており、解毒機能や酵素の合成などたくさんの働きをしている。けれども、体外で培養してもほとんど増えることはないため、なんらかの方法が求められていたところ。来月の研究会で発表される予定となっており、今後、新薬の開発などに役立てられる予定。
ips細胞から人の生殖細胞(精子や卵子)の作成へ
海外ではips細胞から生殖細胞を作るこころみはされているが、いまだ完全な精子や卵子の作製に成功した例がない。倫理的・技術的な面で再生医療の精子や卵子への応用は難しいとされている。だが、このほど、慶応大教授らと加藤レディスクリニック、実験動物中央研究所らが共同で研究することになり、慶大の倫理審査委員会に申請したもよう。
もし、ips細胞で人の精子や卵子の作製が可能になれば、一人の女性の皮膚などの細胞から精子と卵子の両方を作り出して受精させ、母体で着床させることによって生命が誕生する可能性もある。不妊治療への応用も期待されているが、生殖細胞については倫理的な問題があることから2010年の5月までは禁止されていた。
人工多能性幹細胞研究の教授らに恩賜賞など:日本学士院受賞式
陛下は日本学士院第100回授賞式に出席され、人工多能性幹細胞を開発した山中伸弥・京都大教授ら11人に「日本学士院賞」などを贈られたもよう。式典において陛下は学士たちにお言葉をかけられている。「日本学士院が、今後とも碩学の府としてあり続け、世界の学界と相携え、わが国と世界の人々のために寄与するよう願います」「科学技術の進歩が人類に不幸をもたらすことなく、真に人類社会の幸せに役立つようにするために、世界の人々が互いに協力し合っていくことが切に期待されるところです」
国立成育医療研究センター:慢性肉芽腫症に遺伝子治療を検討
慢性肉芽腫症は、白血球の機能に異常があることによって感染症をわずらう病気であるが、抗生物質などによる治療でも改善しないケースが多い。けれども、今回、 国立成育医療研究センターでは、遺伝子治療によって感染症を防ごうという試みがなされるもよう。
これまでも、ST合剤の予防投与などによって治療が行われてきたが、ある程度の有効性が確立している。そのほかの治療法として、造血幹細胞移植なども実際に行われてきたが、遺伝子治療については、臨床試験の段階にある。
民間クリニックが「Stem Source 幹細胞バンク」を導入
とあるクリニック外科では幹細胞バンクを導入し、自分の細胞組織を保存しておくことが可能になった。主に、脂肪組織から幹細胞を採取し、将来、何らかの美容外科や疾病などにかかる際に、若い頃に採取した自分の細胞組織を利用することが可能になる。民間の美容形成外科においてははじめてのこころみになるようだ。このシステムにおいては、採取した脂肪組織をマイナス150度で冷凍保存し、何らかの必要性が出てきた際に利用することになるもよう。費用の方は不明。
人工多能性幹細胞(iPS細胞)での再生治療実用化は2032年との予測
文部科学省科学技術政策研究所が専門家に行ったアンケートによると、今後、2032年にはiPS細胞による再生医療が実現し、がんの転移を抑える薬の開発が2031年に実現するとの予測があるもよう。ほかにも、宇宙観光や砂漠の緑化技術の普及、アトピー性皮膚炎の治療法なども可能になるとのことだ。これらのアンケートは、文部科学省の科学技術政策研究所が大学教授や民間技術者ら約2900人におこなったもの。5年ごとの調査をおこなっており、今回が9回目を数える。
【幹細胞とは?- 自己複製の能力を持つ細胞のこと。】
ところで、この幹細胞とはいったいなんのことなんでしょう?
一般的には、再生医療の分野で注目をあつめているもので、失った細胞を再生して補うことでさまざまな病気への治療に役立てられるよう、研究が進められている。なかでも、es細胞とよばれる増殖力の高い細胞はどのような組織にも分化できるといわれており、疾病をわずらった組織を再生することに期待がかかっているが、人の生命の初期段階である受精卵を利用することになるので倫理性から困難がつきまとう分野でもある。一方、成人の幹細胞を用いた研究もされているが、es細胞と比較すると分化の面での再生能力に劣る面があり、それほどの成果はえられていないのが現状だ。